作品「民芸品がくれた出会い」

民芸品がくれた出会い

思えば3年ほど前、民芸の旅として山陰を訪れてから、民芸を通じてたくさんの人と出会うことができた。何も知らないぼくたち夫婦をやさしく温かく迎えてくださった民芸の世界の方々。それは毎日の暮らしにも、自分の作品にも、素晴らしく楽しい影響を与えてくれていると改めて感じる。モノとの出会いと同時に人に出会う楽しさ。今回の個展のためにできたこの最後の作品では、おかしなコケシのようなものが生まれた。(20センチ角・切り絵)


2015年の個展「民芸品と暮らす日々」より。
文中にある「3年ほど前」とは、2012年のことになりますね。また文末の「最後の作品」とは、渋谷の個展の前に作った最後の作品という意味です。あの鳥取・島根の窯巡りの旅がなかったら、ぼくたちは今のような暮らしや、アトリエを開いて今のような仕事をしていなかったかも知れない(していたとしても、また考えが違うものをやっていたかも知れない)。それくらい、ぼくたち二人にとって大事な旅だったように思う。それまでにも民芸館にはたまに行っていたし、民芸品というものも目にしてなんとなく感じはわかっていたつもりだったけれど、この旅で視点も大きく広がって、もっと自分が好きなものがたくさんあってもっと色々見た方がいいのだと気付いた。

モノを見ていくうちに、そのモノを通じて、自然とたくさんの人々に出会ったように思う。いろんな人のいろんな価値観を知ったからこそ、今自分たちが、自分たちの方法で、誰の真似でもないアトリエをやろうという考えに至ったのだと結果として思う。そういう考えに気づかせてくれたのは、民芸品だったように思っている。

また、民芸と出会ったことで、作品に向かう時の感覚にも変化があった。不思議なもので、民芸品をいろいろと興味を持ってみるようになってから、それまで常に自分の中にデザインソースとしてあったモダンデザインの感じが、民芸とも自然と繋がってきた感覚が実感としてあり、それを作品に表すことが自分らしさになりつつあるように感じている。

この作品は、自分も大変お世話になっている大阪の器店の店主さんのもとへ行きました。彼のお客さんへの接し方、人との出会いを大切にする感じ、この作品で言いたいことに通じるように思います。大事にしてくださっていること何よりうれしいです。


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