作品「葉の文様」
葉の文様
リアルに描くことと素朴につくることの違いを思いながら、大きくスピードを付けて勢いのある葉の文様を切ってみる。これは確か、北欧のテキスタイルか何かを見たとき、美しくてやってみたくなった緑と青の色の組み合わせ。はさみで切ったざっくりとした1枚1枚の偶然の形。それを組み合わせると、音楽のようにあたたかいリズムのある隙間ができる。なるべく単純な形で美しい文様をつくりたいと考えている。(20センチ角・切り絵)
2015年の個展「民芸品と暮らす日々」より。
この作品は確か、切り絵の時に出る「切れ端」を見ていたら、こんなのもきれいかなと思いついた作品だったと思う。個展では、自分の作風の中にもある程度のバリエーションを付けていろいろな絵があることが必要だと思っています。いわゆる「顔」のある生きモノがいる作品(動物でも人でも鳥でも)は分かりやすさもあり、気に入ってくださって売れることが多いですが、こういう文様的なものや幾何学的な作品は、どちらかというと脇を固めるもので、大体いつも女性よりも男性に人気がありました。
切り絵にも色々と種類があるように思いますが、ぼくは初めて会った方に「切り絵をしています」と作品を見せると、大体が「へえ〜」という感じの意外だという反応(そう見える)が多いです。黒い紙を本当に細かく切り抜いて行く「手ワザ」を見せる切り絵は自分には出来ないし、そういう「切ることが目的」という感じがする切り絵は自分の作風ではないので(もちろん素晴らしいですが!)。ぼくの場合は、絵の具の代わりに色紙で「絵を描いている」感覚なので、もっと自由に大らかなラインとフォルムでありたいなあと思っています。
こうしたハサミの切り口を生かした作品は作っていて楽しく、自分の場合は「どう美しく崩れていながら全体が整っているか?」ということを、特に最近は自分なりに気にしながら、ザクザクとハサミを中心にして切っています。この作品は渋谷で展示したあと、神戸を経て、最後に大阪で展示され、気に入ってくださった方の元へと旅立ちました。自分でもこうした意外な?作品が売れるというのはうれしいことです。ありがとうございました。